ニュースで見た方も多いと思いますが、昨日よりフランス・パリにてCOP21こと”国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議”が開催されています。(12/11まで)
地元にいる友人によると、昨日・本日と、COP21開催のセキュリティ対策で、空港?パリ市内を結ぶ高速道路及び環状線の北西部1/4弱などが閉鎖されたそうです。結果として大渋滞が予想されることから、在宅勤務も視野に入れるようにとの通達が出たため、結果、Paris市内の渋滞はいつもは200km以上あるのが、11kmにまで減り、道も会社も、スカスカだったとのことです。
先日のテロの後ですから、現地の警備は大変でしょうね。自分の9.11の直後くらいにニューヨークに行ったことがありますが、あの時も町中に警官がいましたし、マンホールは溶接され、公共の建物に入るたびにX線ゲートを通る必要があったことを思い出しました。
さて、1997年のCOP3での京都議定書をめぐる交渉において、極力時刻の負担が減るような国益交渉のパフォーマンスが繰り広げられ、2大排出国である米中が国際的な法的拘束力をもった削減目標を受け入れなかったりするなど、批准にも問題を抱えてきました。この京都議定書に続く、2020年以降の温暖化対策の枠組みが全ての関係国の合意のもとに築くことができるかが焦点となります。
現状では日本は2030年までに、2013年度比で26%減が削減目標として掲げています。(INDC:Inteded Nationally Determined contribution)また、2010年のカンクン合意では国際社会は「全世界平均気温情報量を2度以下に抑えるべき」という目標に合意しています。また産業革命以降、現在まで約0.85%上昇しているという試算があります。何も対策をしないと2100年までの上昇量は4度を超え、洪水や穀物減産など、多くのリスク要因になるという試算があります。ただ、エネルギーミックスの議論も含め、様々な課題を抱えつつも、地球温暖化の進行を止めるのは非常に困難な状況というのが現状認識です。
対策のための二酸化炭素削減量目標の設定のため、二酸化炭素濃度が増えた場合、最終的に世界平均気温が何度上昇するのかを見積もる必要があります。濃度が2倍になった時の平均温度上昇量を表す指標を気候感度と呼び、2013年の発表では1.4~4.5度とされています。(IPCC AR5)この値は削減コストに影響するわけですが、下限と上限で3倍も異なるという気候変動に伴う難問の一つになっています。
この気候感度の値は、さまざまな気象モデルを利用した気候シミュレーションの結果に基づいているのですが、2007年では2~4.5度(最尤推定値3度)としていましたが、2013年にはエネルギー収支法という手法を用いて1.5~4.5度(最尤推定値なし)と評価されました。下限が下がったという事で喜ばしいものでしたが、この手法もその後見直され、系統的に過小評価していることが分かっており、次のIPCCでは再び上げられる可能性もあります。
日本でも様々な研究が行われており、気候モデルに様々な物理スキームを取り込んでいますが、それらのスキームそのものやパラメータ値に不確実性があるため、モデルやパラメータを変えたシミュレーションでは結果にバラつきがあり、気候感度の評価値は幅を持ったままで縮まっていません。
このような背景があるため、削減目標の「2度以内」といった数値目標については賛否両論がついて回るのですが、問題認識は共通に持たれています。2009年のコペンハーゲンでのCOP15で「ポスト京都議定書」の枠組みを決めるはずが失敗に終わり、今回のCOP21がラストチャンスとも言われています。初日の報道をみると新興国・途上国の主張が強かったようにみえ、改めて鋭く対立することが予想されますが、うまい着地点を見出してほしいものです。